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 動物や生物たちの生態ストーリーです。
     


ラッコは一生のほとんどを水温15度以下の冷たい海の中で過ごします。
アザラシの仲間のような分厚い皮下脂肪は持っていませんが、その代わりに上質の毛皮を持っています。ラッコの毛皮の密度は1平方cmあたり16万本(平均的な人間の頭髪は全体で10万本)といわれています。この毛皮が冷たい海で暮すための助けになっているのです。
ただ、その上質な毛皮だけでは体温を 持するのに十分ではありません。
そのためラッコは高カロリーの食料を 毎日大量に食べ続ける必要があります。
大人のラッコは体重の15%、若いラッコではなんと体重の35%もの食料を毎日食べるようです。
(ラッコの体重は20kgから40kgなので、平均で1日5kgくらい食べる計算になります。)

ラッコの食料はカニの仲間のロッククラブやケルプクラブ、アワビ、ホタテ貝、ムール貝などの貝類、ヒトデ、ナマコ、ウニ、イカ、タコなどで、動きが速くて捕らえる事が難しい魚類を除くと、海にいるものはほとんど何でも食べます。

ラッコの行動でよく知られているのは、お腹の上に置いた石に貝を叩き付けて割って食べる行動です。私も海の近くを歩いていて、カーン、カーンという音でラッコがいることに気づくことあります。ラッコが使うのは 石だけではありません。水中に二枚貝の仲間がたくさん住んでいる砂地のある場所で、ラッコのおもしろい行動を見かけた事があります。最初は、ラッコがお腹の上に石を置いて二枚貝を割っているように見えました。でも良く見ると、お腹の上に置いているのも二枚貝だったんです。このラッコはいつも二枚貝を2個採ってきて、その貝同士をぶつけて割って両方一緒に食べていたのです。賢い!

またラッコは、水中で石を使ってアワビを採ることもあるようです。ダイビング中に、岩の間からゴンゴン音がして砂けむりがあがっているので近づいてみたらラッコが何かを叩いているんです。そのときには、砂けむりがすごくて何をやっているのかわからなかったのですが、後でラッコがいたところを見てみたら、アワビの貝殻のカケラがいくつも岩の下に落ちていました。たぶんラッコは、岩にへばり付いているアワビを石で叩き割って採っていたのです。

その他よく見るラッコの行動で、水面や水中でケルプを抱えて手探りをする行動があります。手探りでケルプに住んでいるカニの仲間を探しているのです。
こんな行動を見ていると、ラッコの食べ物を確保するための知恵に感心してしまいます。



モントレー半島の春は、ワイルドフラワーや海岸のアイスプラントが咲き、一年で一番きれいな景色を楽しめる季節です。それから春は、ハーバーシールの出産、子育ての季節です。
ハーバーシールの出産は、4月上旬から中旬にかけて行われます。水中で出産することもあるようですが、普通は岩場やビーチで行われるようです。 私は一度だけ出産シーンを目撃したことがあります。

いつものようにハーバーシールの群れがいる小さな湾の対岸を双眼鏡でのぞいたら、波打ち際で大人のハーバーシールがじっとしていたんです。普段とはちょっと違う感じで。なんか変だなあと思って、そのまま双眼鏡をごしに観察を継続。しばらくすると、大人のハーバーシールのお腹から灰色の小さな赤ちゃんが真っ赤な胎盤と一緒にスルッとでてきたんです。あっ出産だ!っと思った瞬間、すごい勢いでたくさんのカモメが集まってきて、波に流され始めた胎盤に群がってついばみ始めました。私はこのとき、出産を見た感動より、カモメたちのパワーに圧倒されてしまいました。

ハーバーシールの赤ちゃんは、ビーチではいつも母親と一緒です。寝転んでミルクをもらったり、昼寝をしたり、母親の鰭を甘噛みして遊んだりしています。
ハーバーシールの親子たちが集まるビーチでは、「メィー、メィー」という大きな声が聞こえてくることがよくあります。母親がはぐれてしまった赤ちゃんを呼ぶ声です。普通はしばらくすると、無事再会することができるのですが、稀に本当に迷子になってしまう赤ちゃんもいます。こんな赤ちゃんは、まだ自力で餌を採れないので、不運にもやせ細って死んでしまうことが多いようです。

赤ちゃんは生後まもなく海に入ります。最初は母親の背中に前鰭(前足)をかけて、おんぶで水面の探検をします。子育てが始まったばかりの時期などは、あちこちにおんぶアザラシ親子が泳いでいるので、笑えてしまいます。
生後数日経過すると、潜ることもできるようになります。大人のハーバーシールは水中では神経質で、ダイバーに近づいてくることはあまりありませんが、赤ちゃんはいろいろなものに興味深々です。ダイバーに興味を持って、私の方に近寄ってくることもあります。あまり近づきすぎると、少し離れて見守っていた母親が、「こっちにきなさい!」っていう風に連れ戻したりしています。赤ちゃんがもう少し大きくなって生後3週間くらいなると、ひとりで私のあとをついてきたり、カメラのレンズを覗き込んだり、足ヒレをかじったりもします。この頃のハーバーシールは、本当にフレンドリーで、思わず野生のことを忘れてしまうほどです。

5月の後半になると、ハーバーシールの親子がいた岩場やビーチも閑散としてきます。ハーバーシールの子育ての終わりです。1ヶ月〜1ヶ月半の授乳期間を終えると、赤ちゃんはひとり立ちしていきます。